なにものかを求める使者のように

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慟哭が聞こえるか 他の誰があげたのでもない 己の抑え切れぬ悲しみに張り裂けた、君のその胸から放たれる慟哭 君が耳を澄ませば 太古の命がみずみずしく跳ねる音や、未来で新しい真理の扉が開く音を聞き分けることができる 君の耳は常に開かれた鯨の口みたいに 中にひっかかる音を、まるごと全部その無数に並ぶ髭に搦め捕ってしまうのだ でも君は内なる音に耳を貸そうとしない 君の内側で熱い熱い奔流が、今にも君という堰を破って沸き上がろうとしているというのに それでも気付かぬふりをして、固い沈黙を貫いている
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