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時は今、雨がしたしる五月かな
暗闇の中を一隊が駐留する。
桔梗の旗がゆるやかな風にゆるりとたなびく。
京都の西、今で言う亀岡市と京都市の境、老ノ坂峠。
まっすぐ行けば京、右に曲がれば西国街道から中国地方に、毛利と退陣する羽柴軍と合流。
この羽柴軍と合流こそ、桔梗の一帯にかせられた軍命であった。
この軍を率いる大将。明智光秀
光秀は一帯に一喝した。
「敵は本能寺にあり!」
使いが光秀の元に走りよる。
「信長、本能寺にて手勢数百と共に!今だ我らの動きに気付いた様子はありません!」
勝った。
これで全てが終わる。
急げ!敵は信長の首ただ一つ!
何の為か分からない。
自分のしている事が本当に正しいのか。
憎しみはいつのまにか尊敬に変わっていた。
正直信長を倒したくない。
自分の背負った数奇な運命に光秀は天を仰いだ。
漆黒の京の空を赤く染める本能寺の炎を見つめる。
光秀の目から流れた涙を
その炎が赤く染める。
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