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「ま、せっかくパァーっと安土に行くんだし、んな難しい事考えんなよ。」
ケンイチが笑って僕の肩をポーンと叩いた。
そりゃそうだな。
関ヶ原の山々を越え、幾多の方面から線路が僕らに向かって集まりだす。
おびただしい高層ビル、迷路のような高速道路。
安土だ。
ゆっくりと僕らを乗せた列車が安土駅の28番ホームに入った。
列車をおりた僕とケンイチは気付けば早歩きになっていた。
そりゃテンションがあがる。
久々の安土だ。
なんてったって世界一の国の首都だ。
て言っても三つしか無いが。
日本にはいくつもの大都市がある。
本土でいえば札幌、京都、大阪、福岡、上越、名古屋、仙台、姫路、横浜。
大陸には釜山、ソウル、水原、上海、北京等。あまり中東地方へは行った事が無いので分からないが。三年前、家族旅行で 上露地方へ行ったが寒かった。あそこのウォッカは旨い。
話がそれたが、そんな中でも上海か安土だろ。
「やっぱ異様だな。あの建物は。」
ケンイチが目を輝かせ大通りの先にある丘を見上げた。
安土城。
建てたのは織田信長。
昔は城郭建築だったらしいが、今の安土城は六代目。
今では40階建ての巨大な近代建築物だ。
「はぁ、俺もここで仕事したいなぁ。」
目を輝かせ、ケンイチが子供みたいな顔でつぶやいた。
おいおい、ケンイチの学力じゃ無理だろ。
全員安土大学、京都大学みたいに国立大の人間ばかりだぞ。
あ、今の織田信政様には子供が居ないから養子になれば天国だな。
あえてケンイチに僕は何も声をかけなかった。
「なんで無視やねん!!」
ケンイチが下手な標準語で突っ込んで来た。
僕は信政様の養子になれと冗談まじりに話した。
「なるほど!光一頭良いね!」
おいおい…
しかし、この信政様に子供が居ないから養子になれ。
そんな他愛も無い冗談が今後僕の運命を急激に変化させていく。
養子では無く、子供が居ないって話の方。
適当に買い物を済ませた僕達は、そろそろ岐阜へ戻ろうと言う事になった。
しかしケンイチが
「せっかく電車だし、軽く飲んでかない?ほら、アソコ」
ケンイチの指差した先に小洒落たバーがあった。
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