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「そんな事思ってるのは日本人だけだ。」
井上さんは片手にしていた何やら茶色い酒をグィッと飲み干した。
「いつまで織田の専制政治が続くと思ってんだ?」
は??
「織田の世の中が終わるって事ですか?」
ケンイチが聞いた。
「そうだ。実はな。町、少し慌ただしくなかったか?」
そんな事安土に圧倒されて気がつかなかった。ましてや、安土はいつも慌ただしい。
「今の殿、信政様の体がヤバイらしい。しかも信政様には子供がいない。」
あ、そういや、昼間ケンイチとそんな話してたな。
「て事は家督争いが起こるわな。それが一筋縄に行きそうにないんだ。」
「なんで?今までも、そんな事あったでしょ。」
ケンイチが聞いた。
「今まではな。ただ今回百年ぶりぐらいだ。それまでに織田が大きくなりすぎた。分家や親類でややこしいのが多いんだよ。
ようするに織田直系だけの話で収まりそうもない。
一つは島津系の薩摩織田、そして徳川家、イングランド系の英織田。明系の明織田、朝鮮織田。
ましてや地下組織には天皇政治復活を狙う輩もいる。もちろんイギリスは英織田を推してくるだろ?百年前に明織田や英織田なんていう外来系織田は無かったんだよ」
「マジか…、て事は織田本家と織田分家、ましてや、イギリスと戦争になりかねないって事。」
ケンイチが久々にカッコイイ事を言っている
「そうだ。しかもそれどころじゃない。明や朝鮮、インド、露州がこれを機会に独立を目指すって事もありえるだろ?そうなったら人類全員の戦争になるぞ。」
「ど、どうすれば!?」
ケンイチが顔を真っ青にして井上さんの話に食いついている。
酔ってるのか??
井上さんが大きくため息をついて、切り出した。
「過去に行って、織田信長を倒す。」
………………!?
「へぇ…、な、なるほど。なぁ光一、俺飲み過ぎた。そろそろ帰ろうか」
そそくさとチェックを済ませて走るように僕らは店を出た。
「やっべー!あの親父!!完全にイカレてるよ。早く帰ろうぜ。ククッ。でも面白かったな」
二人共、安土の駅まで笑いが止まらなかった。
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