小さな命

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 空が紅から黒になって明るさがなくなり、温度も下がってきた頃に子猫は目が覚めた。 「オツチサマが昇ってる……。お母さんはまだかな?」  子猫は周囲を見回すが母親らしき影はなかった。 「お母さん……。遅いな……」  空腹と夜の寒さで子猫の体力はみるみる奪われていった。  親猫は魚屋から魚を盗み全力で逃げる途中……追っ手をまく為に道路に飛び出した。その時、黄信号になって急いではしってくる物体があった。  全身は黒一色で、ガラスも全て曇りガラスでコーティングされた一台の車。  その二つが道路を通るのは同じタイミングだった。  車のバンパーが親猫の体を宙に舞わせ、浮いた体はそのまま地球の引力によって地面に叩きつけられた。引いた時の威力はバンパーが少しへこむほど大きかった。  その時の衝撃で親猫の体はありえない方向に折れ曲がり、頭からは大量の血が流れ出して体を朱く染めていった。  車の運転手は猫を引いた事には気付いたが、面倒事に巻き込まれるのを避ける為、そのままの速度でどこかに走り去っていった。
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