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子猫は相変わらず同じ場所で来るはずのない母親を待ち続けていた。
「お母……さん……」
裏路地という影しかないような場所が夜の寒さをよりいっそう際立たせている。
商店街の方からは温かい明かりが零れ、美味しそうな料理の匂いが寒い風と共に運ばれてきている。
子猫は寒さから逃れる為に明かるい方に行こうか迷っていた。
母親の話では向こうにはニンゲンと呼ばれる大きくて恐ろしい化物がいて、そいつらは母親と一緒でなければ襲ってくると言われていた。
しばらくは子猫も必死に寒さを堪えていたが、少しだけなら。と言う気持ちが出てきた。
やがて誘惑に負け、空腹でおぼつかない足をゆっくりと動かしながら明かりの方向に歩き出した。
「少しだけ……。少しだけ……」
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