小さな命

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 子猫ははじめて一人で商店街を見た。  全ての方向から月なんか比べものにならないくらいの光に照らされ、そこらじゅうに大きくて歩いている生き物がいた。 「あれが……ニンゲン?」  子猫は恐怖に体を震わせ、通りまでは行けず店境の所で動けずに固まっていた。  さっきから同じぐらいの大きさの化物が何人も通り過ぎていく。誰も子猫には気付かずそのまま帰路につくものや建物に入っていくものばかりだった。  子猫は襲ってくる様子がなかったので一応安心はしたが、母親がいない為かわずかな恐怖心だけは残った。  その時、子猫のいる場所とは道路を挟んで向こう側の道に母親に似た姿を見つけた。 「お母さん!?」  子猫はすぐさま母親らしき姿を追い掛ける為、道路に飛び出した。  同じタイミングでバンパーが少しへこんだ黒い車が猛スピードで突っ込んできて、小さい命を吹き飛ばすとそのまま通り過ぎていった……。
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