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話し合って船を進め始めてから一時間程経過した。正確にはもっと短いかもしれないが、時計が潮にやられて故障してしまった為大まかな時間しかわからなかった。
「あっちゃん。何か見える?」
「ダメだ。暗過ぎて何も見えないや」
「とにかく光が見えたら言ってね?」
「わかってる」
淳弥が船の先端部分から回りを見渡しながら救助に出ているであろう船の光を探している。海も探してはいるものの、暗闇の中を走行するにはかなりの精神力を使い回りを見渡す余裕はなかった。
海が波に流されてしまわないように運転に集中していると淳弥が話し掛けてきた。
「かっちゃん……」
「どうした? 光が見えたのか?」
「あれ……何だろう」
淳弥の説明では何が言いたいのかわからなかったので仕方なく船を一度停止させた。
淳弥は運転席から見て右側の水平線を指差している。海がそっちを見ると海面で何かが波に揺られながら動いている。視界が悪い為影しか見えず何であるかは判別できなかった。
「とにかく近付いてみよう……」
海は船をその影の方向に走らせた。
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