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近付くにつれて影の招待は船であることがわかった。しかし、それは救助の船ではなかった。
船体は所々破損しており、とても人が乗れるような状態ではなかった。
「難破船みたいだな。これじゃあ意味ないや、かっちゃん今は大人達を捜そう」
淳弥がまた辺りを見回す体制に入っても船は動かなかった。不信に思い淳弥は海に言った。
「どうした? まさか燃料切れか!?」
淳弥が慌てながら運転席を見ると、海は難破船を凝視していた。淳弥の声はまったく届いていない様子だった。
「かっちゃん!!」
「あれ……父ちゃんの船だ……」
「えっ!?」
淳弥は難破船の側面に書いてあるはずの名前を探した。
その船の名前は薄くて読みずらいかったが海の父親の船と同じ「海潮丸」という名前が書かれているように見えた。
海は船を難破船の真横に停めると確認するように見回していた。
「間違いない。父ちゃんの船だ」
「おい待てよ。かっちゃんの父ちゃんって確か……」
「帰らずの海域に行ったんだよ」
俯く海の表情はひどく悲しげだった。父親の生存を信じていた海にとってこの現実はあまりにも過酷すぎた。
淳弥も同じ気持ちだったがしばらくするとかなり同様した様子で言った。
「まさかここって帰らずの海域なんじゃぁ……」
海もそれに気付いたようで辺りを見回したがあるのは暗闇だけで意味はなかった。
一刻も速く移動すべきと考え海は急いで運転席についた。
その時、いきなり潮の流れが変わり難破船が沈没した。それと同時に二人の乗る船が波によって操作不能状態になり、そのままどこかに流されはじめた。
まるで何かに引き寄せられるように……。
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