帰らずの海域

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 防波堤の上に少女が立って水平線を見ている。  身長は百六十cmぐらい、白いワンピースと麦藁防止を被っていた。見た目は十六歳程で海を見る眼差しはどこか悲しげだった。 「唯ちゃん」  ふと少女を呼ぶ声が聞こえた。 「あら、こんにちは」  唯(ユイ)と呼ばれた少女が振り返り、話し掛けてきた女性に笑顔で挨拶をした。  その女性の手には花束があり、綺麗に花が咲いていた。 「今日も暑いねぇ。家で麦茶でも飲んでいくかい?」 「いただきます」  少女は笑顔で答えた。それを聞いて女性は笑顔になり、防波堤にのぼると少女の隣に立った。 「じゃあこの花を海にあげてからいこうかね」  そういうと女性は持っていた花束を海に投げた。  花束は海面に浮かぶとしばらく波に揺られ、ゆっくりと沈んでいった。  唯と女性は花束が見えなくなるまで合掌をしていた。その時女性が小さな声で呟いた。 「海……。あんたの彼女は今もここで待ってるよ。早く帰ってきな……」  花束が見えなくなると唯は女性に話し掛けた。 「日差しが暑いですね。海君のお母さん、行きましょ?」 「そうだね。冷たい麦茶が待ってる」  二人は防波堤から下りてゆっくりと歩き出した。 「海君が帰ってこなくなって今日で三年か……」 「まったく海は淳弥君と何やってんだかね……」    太陽が夕日となって海を赤く染め、風が潮の香りを運び穏やかな波が防波堤に当たっている…………。
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