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それから数日後……。
いつもの野原で少年は空を見上げているはずだった。しかし、今日は少女を見つめていた。
「空、見ないでいいの?」
「ホシが消えるのが見えそうにない」
「今日はホシが失くならないって事?」
「…………」
少年は黙り込んで何かを念じるように空を見上げた。
やがてゆっくりと少女に向き直りまっすぐに見つめた。その表情は穏やかでとても優しい笑顔。でも眼だけはとても悲しそうにしていた。
少女は表情と悲しそうな眼を不思議そうに見ていたようだが、時計を見ると少年に言った。
「もうすぐいつもの時間だけど……」
「アイリス……」
「何?どうしたの急に……」
「君を好きになれてよかった」
「私も……。ケレスを好きになってよかった」
「そろそろ時間だな」
「いつもの時間? そうだね」
アイリスと呼ばれた少女は時計を見るとそう答えた。
少年……ケレスは立ち上がると振り向きながら言った。
「伝言は届いただろうか……。なぁ?アイリス」
「何? どういうこと?」
それきり二人の視界は全て光に覆われた。
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