小さな命

3/6
前へ
/132ページ
次へ
 親猫が去ってから一時間程の時間が過ぎた。  いつもなら帰ってくる時間だが、今日は遅くなると言っていた親猫の言葉を思い出し、約束通り子猫は一人で待っていた。 「お母さん早く帰ってこないかな……」  子猫は近くにある黄色い物体の上にのると体を丸めた。  ニンゲンが捨てたソファーの中身だと誰かが言っていたのを聞いた事があったが、子猫にはニンゲンもソファーもなんのことかさっぱりだった。  それでも柔らかい物体の上に居るのがお気に入りで母親が遅い時はいつも此処で待つのが習慣になっていた。 「まんまるで白く光ってる……オツチサマだったかな? あれが空に昇るまでには帰ってくるかな……」  子猫は紅く染まりつつある空を見上げながら呟いた。  やがて、子猫は柔らかい物体に体を預けたまま静かに寝息をたてていた。
/132ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加