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俺とまりあは隣近所ということもあり二人で学校に通っていた。
勿論、帰りも一緒。
"女の子なんだからあんたが守りな"
という母親の言葉もあり俺はほんの少しヒーロー気分だったのかもしれないと今なら思う。
『ちーちゃん、ありがとう』
『別に。つーか、そんな女みたいな呼び方するなったろ』
俺の斜め後ろを歩くまりあはいつの頃からか"ちーちゃん"というとても不本意なあだ名をつけやがった。
俺の話は担任には通じないし所詮、こんなもんだと思えたのはまりあだけがちゃんと分かってくれていたおかげかもしれない。
『えー可愛いよ?』
『可愛いくなくていいぞ、俺は』
不満そうな俺を他所にまりあは俺に駆け寄り当然のように指先を立て笑んだ。
帰り道はいつもこんな他愛ない話をしながら帰った。
『駄目?』
『だーめ』
俺が嫌だと首を左右に振るとむぅと考えこむように唇尖らせ指先を顎に当てた。
『じゃあ、ちぃのすけ?ちぃたろう?』
『泣かすぞ、まりあ』
ちょっとは改善されるだろうかと思った俺の期待は思いつきとしか思えないまりあのあだ名に打ち砕かれた。
『意地悪~おばさんに言い付けるよ』
『はぁ…ちーちゃんでいいから』
まりあはびくっと肩を揺らし涙目になり始め、俺は仕方ないとばかりに肩を落とす
すると俺の言葉にまりあは嬉しそうに両手を叩き"決まり"と涙目だったのは幻だったかと思うほど元気だった。
結局、俺が譲歩していた。
ああそうだ、きっとあの頃から俺はまりあに敵わなかった。
しょうがないだろ、ものすごく嬉しそうに笑う笑顔も気に入ってたんだから、言わねえけど。
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