新しい1日

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  「小僧、どこ見ちょる」   「腹減ったー腹減ったー」   「なんだこれ、向日葵よりデカイな」   「ちょっと、邪魔だよ」   「あああ!飯だ!!」   頭上から降ってくるジギルは、瞬く間に数を増していく。 悠太の足の周りや向日葵の葉の上は、黒い埃が積もっていくように覆われていった。   (ヤバイ……)   逃げ場を失って固まっていると、遠くから口笛を吹くような高い音が聞こえてきた。 自分のペットを呼ぶような、そんな音だった。 悠太はあまりの数のジギルに怯えながらも、音が鳴る方へと顔を向ける。   何でもいいから、とにかくこの場から助けてほしかったのだ。 誰かいるのなら、今すぐにでも殺虫剤を撒いて欲しかっただろう。 しかし現実はそうは上手くいかない。 音がした方には頼りになりそうな人はおらず、今度は何とも言えないような鳴き声が聞こえてきた。 それは凄まじいスピードで、悠太の方へと向かっているのだ。   「ちゅわちゅわちゅわちゅわちゅわちゅわちゅわちゅわ……」   幾つもの黒い塊が、聞いたこともない鳴き声を上げながら突進してくる。   「うわあぁっ!」   悠太は猛突進をしてくるその物体を確認することなく、顔を手でかばうように覆った。 何なのか確認したかったが、それよりも瞬発的に体が身を守る方を選んだのだろう。   悠太はコウモリの大群が押し寄せてきたような恐怖感に身を伏せ、ひたすらその物体が去っていくことを願った。   その物体は、バサバサと羽を擦るような音をたてながら、突風と一緒に悠太の周りを猛スピードで通り抜けていく。 悠太は顔を足の間に埋め、手を顔から耳に移動させて塞いだ。   バサバサバサ……   悠太は一瞬背中に強い衝撃を受けたのを感じた。 (怖い……怖いっ。 何なんだ、頼むから早く、行ってくれっ!) 悠太は動くことなく、恐怖に涙ぐみながらも、必死に頭の中で願掛けをしていた。 それが叶ったのか、突風と共に妙な鳴き声の軍団は段々と通り過ぎていく。   それはたった数秒間だったが、悠太にはまるで何時間も経ったように感じていた。 (何が見えるかなんて考えたくもない……) 悠太は固く閉ざした目をほどくように、恐る恐る開く。 ゆっくりと視界は開かれていき、やがて、その光景が明らかになっていった。
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