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悠太は毎日夢を見ているような感覚に陥った。
何故自分は生きていて、何故ここにいるのだろう……。
様々な体験をし、社会に貢献したり自分をより高みに持ち上げようとしたり。
時には泣いて、時には笑って……
そんな普通の生活が出来るのなら、人間の価値も分からなくはないだろう。
しかし、悠太は苦しむことさえ許されなかった。
全てが嫌になったからと言って、自暴自棄になることはできない。何かを願っても、失望するばかり。
右を向きたいと思ったとこで、誰が気持ちを察して右を向かせてくれる?
絶望と失望の繰り返しで、悠太は欲することをやめたのだ。
すると、何もかもが夢を見ているかのような感覚に襲われていく。
そして、心の苦しみまでもが奪われてしまった……
しかし人間は欲する生き物。
悠太は自分の出来るところで自分を満たしていった。
現実では何も望まないが、自分の妄想の中で悠太は常に希望を持っていた。
妄想の中では、誰も悠太を失望させられない。
望めば、何かが返ってきた。
悲しんだり、苦しんだり、時には幸せさえ感じた。
空を創り
海を創り
生命体を生み出し
やがて悠太の妄想は、悠太の中で現実へと変わっていく。
悠太の人生の物語は、悠太が創り上げた物なのだ。
悠太の向かう先は、悠太が決める。
そう……そのはずだった。
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