辿り着くべき場所

5/12
前へ
/31ページ
次へ
  悠太は毎日夢を見ているような感覚に陥った。   何故自分は生きていて、何故ここにいるのだろう……。 様々な体験をし、社会に貢献したり自分をより高みに持ち上げようとしたり。 時には泣いて、時には笑って…… そんな普通の生活が出来るのなら、人間の価値も分からなくはないだろう。   しかし、悠太は苦しむことさえ許されなかった。 全てが嫌になったからと言って、自暴自棄になることはできない。何かを願っても、失望するばかり。   右を向きたいと思ったとこで、誰が気持ちを察して右を向かせてくれる?   絶望と失望の繰り返しで、悠太は欲することをやめたのだ。 すると、何もかもが夢を見ているかのような感覚に襲われていく。 そして、心の苦しみまでもが奪われてしまった……     しかし人間は欲する生き物。   悠太は自分の出来るところで自分を満たしていった。 現実では何も望まないが、自分の妄想の中で悠太は常に希望を持っていた。 妄想の中では、誰も悠太を失望させられない。 望めば、何かが返ってきた。 悲しんだり、苦しんだり、時には幸せさえ感じた。   空を創り 海を創り 生命体を生み出し   やがて悠太の妄想は、悠太の中で現実へと変わっていく。     悠太の人生の物語は、悠太が創り上げた物なのだ。 悠太の向かう先は、悠太が決める。   そう……そのはずだった。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加