辿り着くべき場所

11/12
前へ
/31ページ
次へ
  『109の住人』   その病室の患者二人は、どんなに治療しても同じ病気や怪我を繰り返し、また戻ってくるのだ。 家族はどこで何をしているかも分からず、面会にやって来る者は未だ一人もいない。   そして何より妙なのが、二人の生活リズムだった。   だいたいの患者は消灯時間になると、何もできないので渋々眠りにつく。 そして必ず三度の食事、検査や治療があってもだいたいは規則正しく1日を過ごしていくものだ。 何にしても看護師と先生達が目を光らせている限り、患者は反抗をできるわけもなく、自然と流れができていく。   しかし『109の住人』は違った。 消灯をしても彼らは眠りにつくことはなく、何もできないのにも関わらず、ずっと起きたままなのだ。   だからといって永遠と眠らないわけではない。 彼らは必ず、太陽が昇り、時計の針が12の数字を指す頃に眠りについた。   起床はだいたい夕方あたりで、食事や治療も二人の生活リズムに合わせるしかなかった。   最初は看護師、医師共に時間を狂わせまいと努力したが、どんなに言っても「それが自分達の生活だ」と聞かなかった。   特に悪い影響が出ないので、一年ほどは粘ったが、いつしか皆諦めてしまった。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加