ストレンジカメレオン

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息も途切れ体に疲労を感じたころ、僕は山にいた。 山には川が流れている。 川沿いに歩く。 僕は疲れてその場に横たわる。 月明りに照らされ星々がきらめく空を僕は何年も見ていなかった。 数分、もしくは数時間たっていたのかもしれない。 ふと雲が視界をふさいだ。 「大丈夫ですか?」 雲と思ったのは女性だった。 「・・・」 僕は声の出し方も忘れていた。 彼女は、もう一度呼び掛けてきた。 「・・大丈夫ですか?」 「大丈夫です。ちょっと思い出にふけていただけですから。」 僕はそう言って立ち上がる。 しかし急に走った後の体は思い通りに動かず、川に吸込まれる。 「あっ・・・」 彼女は声を上げ僕をつかまえる。 ばしゃん 僕は彼女と一緒に川の浅瀬に落ちてしまった。 二人ともしりもち状態で顔を見合う。 「大丈夫ですか?」 彼女は会って三回とも同じ言葉をかけた。 彼女は月明りを浴びて水に濡れた髪や体が光っていた。 「・・綺麗だ。」 僕は謝るための言葉よりも心に強く思った言葉をつむぎ出していた。 「ええ、とっても綺麗ですね。」 彼女は空を見上げてさらに輝く。 「すまない、川に落としてしまって。」 彼女は何も言わず空を見上げている。 彼女の美しく輝いていたものは川の水だけでわなく、涙だった。 「ここは思い出の場所なの。」 急に彼女が話し始めた。 「・・・」 僕は無言でその話に聞き入る。 「幼いころ、仲の良かった男の子がいてね、あなたみたいに寝転んでいたのよ。 私は起こそうとして、さっきみたいにに川に落ちちゃって。 ・・その男の子は今どこに居るのかわからないの。急に転校がきまってしまってね。その子ったら、別れ際にこう言ったのよ『必ず迎えに行く、まってて。』だって。」 空を見上げていた目は僕を見つめなおした。 「その男の子が迎えにきたらあなたはどうするかい?」 僕は返事をまった。 この時、もう僕は確信していた。 彼女は気付いていないのだろうか。 不思議な顔をして少し考えていた。 僕の顔を見つめたまま。 少し時間を置いて彼女は答えた。 「わからないわ、だから、言ってみて。」
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