ガーベラが散った後

2/7
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
午前三時。そんな時間でも、未だ明るさを失うことのない街を出て、光とは無縁の森の中へと入っていく少女がいた。 その森は俗に言う【迷いの森】と言うやつだ。ちゃんとした契約をしないと一ヵ月彷徨う事になり、その期間を生き延びることができたら外に出ることができるという。 そして今、森の中へと足を進めている少女は既に契約済みであり、迷うことはない。現に、目的の場所である洋館に辿り着くことができた。 洋館はB級ホラー映画に出てきそうな、いかにも「何か」が出そうな建物で、少女は知らぬ間に胸の前で組んでいた手に力を入れた。そして、何かを思い出したように鞄からいそいそと携帯電話を取り出すと、心配そうに時刻を確認した。 時刻は3:23。 それを確認すると、ほっとしたように胸を撫で下ろす。しかしそれも一瞬のことであり、今はもう先程と同じように緊張した面持ちである。 何時迄も立っている訳には行かず、少女は意を決したように建物のベルを鳴らす。すると、直ぐに扉は開き、少女を招き入れる。 建物の中は灯りが一切灯されておらず、廊下が何処迄続いているのかまったくわからなかった。少女は足を踏み入れることもできず、唯々立ち尽くすばかりであった。しかし、微かに聞こえる音に首を傾げ、闇へと続いている廊下の先へと目を凝らしてみる。すると、小さな灯りがゆらゆらと揺らめきながらこちらへ近づいてくる。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!