ガーベラが散った後

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やっと見ることのできた光に安堵する間もなく、少女は訝しげに目を凝らす。     ガァ───     先程から聞こえている音が、灯りが近づくに連れて大きくなっているような気がするのだ。そして更に少女は気付く。その灯りが尋常ではない速さで自分に向ってくる事を。     ガァ───ガシャァン!     「ひッ!?」     派手な音を立てて目の前で止まったのは自分と同じ、若しくはそれ以上の背丈を持った兎の人形だった。未だ反動で揺れている兎は執事の様な服を着て、真っ白な手袋をしているその手には、淡い光を放つランプがあった。少女は泣きそうになるのを堪え、恐る恐る兎の頭上を見てみると、そこには兎を吊している太めのワイヤーがあり、レーンが廊下の奥へと続いている。先程の音は、この兎がレーンを走ってきた音なのであろう。 少女は理解し、ふと兎の顔へ目線を向けると、つい顔を逸らしてしまった。兎の目は眼球が飛び出すのではないかと思う程見開かれ、何処と無く睨まれているような気がする。 兎の人形を使うなら、もっと可愛いデザインにすればいいのにと、思わず悪態を吐きたくなるのを我慢していると、不意に兎がキリキリと耳障りな音を立てて180゚回転した。そして来る時とは違い、ゆっくりと来た道を戻っていく。少女は少し躊躇ったが、兎に続いて奥へと進んでいく。 暫く歩き続けると、兎は一つの扉の前で止まった…そもそも、此処迄の道程の中、他の扉は一つもなかったのだが。 少女が微かに揺れる兎の後ろ姿をぼーっと見ていると、ギィ…と音を立てて扉が開かれた。ひょいと、兎の横から中を覗き見ると、少女が三人見えた。
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