ガーベラが散った後

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一人は、扉の真正面の椅子に座る金色の髪の美しい少女…しかし、彼女は人形の様に無表情であり、右目は包帯で隠されていた。 もう一人はソファに座っている小さなハットを被った黒髪の少女で、金髪の少女とは違い、にこりと綺麗に微笑んだ。 最後の一人は幼女のようで、黒髪の少女の膝を枕にして眠っていた。     「どうぞ…中に入って」     黒髪の少女に促され部屋のなかに入ると、入り口の直ぐ横にもう一人居た事に気が付いた。その少女は眼鏡をかけていて、穏やかに笑うと椅子を用意してくれた。小さく頭を下げ、お礼を述べると、彼女はにこりと笑い部屋を出ていった。     「座って」     また黒髪の少女に促され、ゆっくりと椅子に座る。目の前には金髪の少女がいて、何故か酷く緊張した。     「こんばんわ。私はMAD HATTER…いかれた帽子屋さん。ララって呼んで」     そう言って、またにこりと笑うララ。     「その娘はアリス…そして、こっちは眠りネズミさんのモニカ」     ララの紹介で、少女は何か掴めたような気がした。この森はワンダーランド…不思議の国であり、無許可では入れない。そしてあの兎は白兎で、この部屋は…いかれたお茶会が始まっているのか。     「さぁ、貴女の名前を教えて」   「渡辺…麻紀子……」   「そう…じゃあ麻紀子、貴女は誰を殺したいの?」     このいかれたお茶会…麻紀子は此処に自ら参加した。此処は何かを代償に、自分が憎む者を殺してくれる処。麻紀子は殺しを依頼しにきたのだ。しかし、彼女達に依頼をするには、幾つかの条件があった。 一つは、黒い紙に赤い文字で訪問する日を書き、ベランダに置くこと。そして時間は必ず午前三時から四時までの間に来ること。 二つ目は、自分の「何か」を代償にすること。 その「何か」は人それぞれであり、不明である。時には現金、時には記憶、時には命…それが何かわからない。
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