おおわれる街

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 入ってきたのは細めの男性教師だった。 名前は黄嶋(おうしま)で、ワイシャツにネクタイのピッシリした服装である。 「先日のテストを返す!」 当然生徒は嫌な反応を示す。 彼は押し黙ったままそれぞれのプリントを生徒に渡す。 「聖夜!どう?」 そう聖夜に聞いて来たのは隣の席の燈美(とうみ)だった。 「ん?それなりだな!」 と赤く89とかかれた数字を不満げに見せつけた。 「んなっ……!なんでそれだけの点数をとっておいてそんな顔なのよ!」 と声は小さいが怒鳴りつけた。 「そういうお前は?」 彼がそういって手のひらを差し出した。 「み……見せない!」 彼女は答案用紙を背中に隠した。 「そうか……人には見せさせておいてそうするのか~悲しいな!モテねぇぞ!」 とそっぽを向きながらぼそついた。 だが燈美の耳にはしっかり聞こえていた。彼女は聖夜のことが好いているがなかなか素直になれないのだ。 いわゆる今時のツンデレである。 「わかったわよ!」 と見せた。 答案用紙には77の数字。 「なんだ!なかなかいい点数じゃん!しかもラッキーセブンじゃん!何か良いことあるかもな!」 と聖夜は彼女の頭を撫でた。 『もう、良いことあった!』 彼女としてはこの事が最高の喜びだった。
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