一日目

3/8
126人が本棚に入れています
本棚に追加
/279ページ
シャアァァ… 風呂場の戸から湯気が漏れる。 丹念に肢体を洗い、バスローブを羽織った潤子は、鏡に向かって呟いた。 「老けたなぁ…」 それ以降は無言でドライヤーをあて、髪のセットをしていた。 潤子は16から年を偽り、キャバクラ嬢として働いていた。 19からソープで働きだし、21の誕生日、自宅の他に海沿いに、別宅を買い、この仕事を始めた。 勿論、営業許可など得ていない。 潤子は、表向きはスーパーでパートをしている。そんな設定。知人のつてでそのような事になってる。 しかし、実際は、夜この別宅で、口コミでやってくる金持ちの男共の相手をしている。 「いらっしゃい、お待ちしておりましたわ」 紫のドレスに身を包んだ潤子は、今宵の客に微笑んだ。 政治家とは聞いていたが、いかにもという顔だった。眼鏡を掛けた中年の男は一見真面目そうだが裏がある…そんな客だった。 「いや~友人から君のことを聞いてね、これほどまで美しいとは…」 客は、潤子を見つめ、ほぅとため息を吐いた 「どうぞ中へ…」 流し目で男を誘う。 「あっ…あっ、あ…んッ」 まだ更けない夜に、妖艶な声が響く。
/279ページ

最初のコメントを投稿しよう!