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さんさんと太陽の光が降り注ぎ、小鳥のさえずりと蝉の声が響く。
爽やかな夏の朝である。
だが、その爽やかな空気は、一人の少年の叫び声でぶち壊された。
「うおおぉぉ!ヤベェ、遅刻だああぁっ!」
そう叫びながら、物凄い勢いで自転車をこいでいるこの少年。
彼の名前は定梶 慧。
体育が好きで勉強が嫌い。
彼女いない歴十六年、そして現在も記録更新中。
どこにでもいる、普通の高二の男子である。
そして今、彼は学校に遅刻しそうな状況に追い込まれていた。
必死に自転車をこぐたびに、縛った茶色の髪が揺れる。
家を出て数分しか経っていないにも関わらず、慧の制服は汗で濡れていた。
だが今の慧には、垂れる汗を気にする余裕はない。
慧が遅刻した理由は、まず、目覚まし時計が止まっていて寝坊。
二歳年上の姉―風樹に、
「なんで起こしてくれなかったんだよ!」
と文句を言ったが、
「自分が悪いんでしょ。」
と、さらりと言われてしまった。
さらに、家を出ようとしたら自転車の空気が抜けていたため、かなりのタイムロスに。
その遅れを取り戻すため、慧は必死に自転車をこいでいた。
そしてようやく、学校が見える下り坂まで辿り着いた。
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