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学校は半日で終わり、慧は自室でのんびりしていた。
「はぁ~…半日でも疲れた…。」
ため息混じりに呟くと、今日出会った転校生―綾徒のことを思い出してみる。
(それにしても、アイツはなんでオレの名前を知ってたんだろ?)
その疑問を本人に尋ねてみたが、
「さあ?」
と、にっこり顔で言われ、結局疑問は解決しなかった。
そのせいで、余計に慧の中で疑問が渦巻いた。
そのことを考えながらベットでゴロゴロしていると、床に置いてある空になったカップラーメンの容器が視界に入った。
今日の昼食に食べた物である。
「あーあ、母さんの味が恋しいなぁ…。」
慧には両親がいなかった。
母親は慧が九歳の時に他界し、父親は慧が生まれる前から行方不明である。
母親は元々、体が弱かったため、よく体調を崩し、入退院を繰り返していた。
そして重い病気にかかり、他界してしまったのだった。
一方、父親の方は、行方不明になった理由すらわからなかった。
唯一の家族である、姉の風樹にも。
その彼女は今、仕事に行っていた。
父親が残したという財産があるものの、いつまでもそれだけで生活するのは無理である。
そのため、風樹は大学進学を諦めて就職したのだった。
もちろん、慧は自分を養ってくれる風樹に感謝していた。
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