序章・夢

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(あ、またあの夢……)  わたし、原沢 純(はらさわ じゅん)には繰り返し見る夢がある。それはすごく冷たくて苦しい……、でもどこか懐かしい夢。  最近は見ることもなくなっていたから忘れてたんだけど……。  でも今日の夢は同じだけど違う。  雰囲気は同じ、でも冷たくない――苦しくない。それは暖かくて安らげる夢だった。  夢の中では草原が果てしなく続いてて、その真ん中にわたしがいる。いつもの夢ならこの草原は枯れていて、わたしはボロボロになって立ってるんだけど。  今日の夢でわたしは笑っていた。目の前に誰かいるのだけど靄の向こうにいるみたいでよく顔が見えない。  でも分かる。  この人が安らぎになってる。そしてその人はわたしに向かって手を差し出した。 『行くぞ――、純』  差し出された手を握って歩き出した――。  瞬間起きた。起きちゃった……。 「もうっ! せっかくいい夢だったのに。あの人誰だったんだろう? ぶー、気になるー」
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