弐章・都へ

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 淋が尋ねると風如はそれが当然かのように真顔で言った。 「八源神はみんな同じ場所に文字が現れるんだよ。今まで私が見てきた八源神はどの代でも文字の出る場所は変わらなかった」 「そうなんだぁ」  純は少々声を弾ませ、淋はなるほどと十代らしからぬ反応を返す。 「そうだ、純の修行しないと」  阿狼や夜雷彦が淋の反応に笑ってしまっているのを完全に無視し、風如は相変わらずの間で話を戻していく。しかしなにかを考え込むように黙ってしまった。 「武器、はもちろん使ったことないよな?」  苦笑気味にそう言った風如に純は焦った様子で慌てて返事をする。 「ないに決まってるよ!」 「僕もないです」  純ほど取り乱さず淋も呟くように答えた。 「すぐにお教えできそうな武器は……剣、弓、槍あたりでしょうか?」 「そうだな、そのあたりか」  夜雷彦の言葉に阿狼は頷き、それぞれの修練場を見て回った結果、純は剣、淋は槍と選んだ。  剣を選んだ純は、ついつい甘やかしてしまう風如ではなく阿狼に、槍を選んだ淋は恐ろしいのだが剴について修行を始めた。  しかし純が思っていた程修行は簡単ではなく、筋肉痛や打ち身などで身体中ボロボロになった。  阿狼は風如のようには甘やかさず、しょっちゅう休みたがる純に厳しく修行をつける。その度に泣いて風如に弱音を吐き、風如は慰め元気づけるという日々を繰り返していた。
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