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舞い散る桜の花びら……。
気がつけば季節は冬から春へと移り変わっていた。
「桜キレーイ……」
純は一人庭の端に座って桜や綺麗に整えられた花壇に咲く春の花を眺めていた。今日は修行や鍛練を休みにしてゆっくりするようにとみんなに言われていたのだ。
ひらひらと、くるくると舞う桜の花びらの一つを手に乗せ純は柔らかな表情を浮かべる。暫くそうしていたがこちらに近づいてくる足音に気づき振り返った。
「身体の調子はどうだ、もう痛まなくなったか?」
振り返った先には優しく微笑む阿狼が立っている。阿狼の姿を見て純は嬉しそうに笑った。
「阿狼さん! はい、最初のうちはかなり疲れたけど今はぜんっぜん」
それを聞いて阿狼はそれは心強いなと笑う。
「明後日には城を発つから用意しておけよ」
「――はい」
にこやかに笑っていた口端を少しだけ下げ、純は小さく呟いた。阿狼は純に笑いかけ去って行く。純は少し俯き瞳を輝かせた。
(旅……かぁ。わたし頑張らなきゃ!)
一人決意を固めた純を背に、阿狼は城の廊下に集まっている夜雷彦たちのもとへゆっくり歩いてくる。
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