参章・八源神を求めて

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 旅に出る当日、純は一人城内を慌ただしく走り回っていた。用意はしておいたものの、世話になった大臣や兵士に挨拶などを済ませるのを忘れていた純は挨拶回りに勤しむはめになったわけだ。  いちばん肝心なものを忘れるなんて、と阿狼が叱ったのは言うまでもない。  予定していた出発時間を大幅に過ぎ、太陽が空の真ん中に差し掛かる昼頃、ようやく挨拶回りから戻った純は相変わらずぐったりと風如に寄りかかる。それを見て澤真はクスクスと笑った。  澤真は旅に同行することはできないため、剴と共に門まで見送りにきていた。剴も澤真の護衛のために城を離れることはできない……。というより、澤真が行かないのなら剴も行かないらしい。 「純、気をつけて行っておいで。八源神は必ずしも巫女に従う人たちばかりじゃないから。阿狼達も純と淋君をお願いね」  澤真はこれまでにないくらい優しく微笑み、純と握手をしながらそう言った。純は澤真に微笑んで頷き、 「頑張ってきます。必ず八源神を全員集めて帰ってきますね」 と握った手に力を入れた。 「必ずお守り致しますっ」  阿狼と夜雷彦はやはりそういったことに慣れているのか、二人で声を揃えて澤真に敬礼をする。
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