参章・八源神を求めて

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 一行は街中を抜け、東方に聳える山々を目指して歩を進めた。中央の帝都から東方に向かうと、龍族(りゅうぞく)の隠れ里があると言われている龍水山(たつみやま)にぶつかる。  その龍水山を越え更に東に行くと、水の都・玻蒼(はそう)にたどり着くのだ。  帝都からいちばん近いのが玻蒼だったため、阿狼が純と淋の旅慣らしにちょうど良いと選んだのだった。  龍水山には、人里に近いこともあってか妖怪が少ない。少ないとは言っても、まったく襲われないわけではないのだ。旅に出て一週間、純は低級妖怪ならば遭遇しても騒ぐことはなくなってきている。段々と慣れてきたな、と阿狼も少々気が楽になったようだ。  山道をくだり龍水山を越えた辺りで、頂上では遥か遠くに見えていた小さな集落が徐々にくっきりと見え始めた。それを見た純は多少疲れ気味の表情から一変、瞳を輝かせている。 「あっ、もうすぐそこかなっ?」 「そうだな、今日はあの集落で宿をとるか」  阿狼もそれを確認し、頷きながら言った。一人満面の笑みで喜びはしゃぐ純に、風如は呆れ気味に呟く。 「純、お前風呂に入りたいだけじゃないのか?」 「えっ……、風如ってばなんで分かったのっ?」  風如を見上げ驚いたように純が言うと、全員が一斉に笑った。  夜雷彦は優しく笑って 「巫女様は相変わらず可愛いらしいですね」 と、笑われて不思議そうにしている純に言う。 「ホントですね」 「……確かに可愛いなっ」  夜雷彦の言葉に淋も微笑んで頷き、風如は明らかに吹き出しながら同意した。ただ一人、阿狼を除いて。 「そうなのか?」  そんな朗らかな雰囲気の中に、阿狼の放った言葉が水をさす。 「――なっ」  純は阿狼の言葉にこれでもかというほど反応し、口をふくらませて怒りを表現した。そんな二人を見て 「……ぶっ」 と、純以外はまた一斉に笑い出してしまった。
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