ad libitum/自由に

音楽室にて

「いや、もういい」

……なんか疲れた。

「そうですか、じゃあ帰りましょう」

……はい？

「帰れば？」

「待っててあげたんですから、早くして下さい」

こいつには俺と言い合う気は無いらしい。

「あぁ分かったから、ちょっと待ってろ。片付けしてから……ってない……」

横の椅子に置いておいた俺のビオラが無くなっている。

「楽器なら私が片付けておきました」

真樹の足元を見ると、楽器ケースが置いてあった。

……気がきくじゃあねえか、この娘。

「だから早くして下さいよ」

「はいはい、今すぐに」

そして俺は、真樹と一緒に音楽室を後にした。