7人が本棚に入れています
本棚に追加
2006年11月21日(火曜)新月
雨の夜、彼は愛車(ホンダホーネット250バイク)を飛ばしていた。
背中のバックには、火災現場のビデオテープが入っている。
ついさっき、現場のキャメラマンから受け取ったばかりだ。
急いで、東京港区のテレビ局TBNに届けなければならない。
後一つカーブを曲がれば、局に着くと思った瞬間、急に赤のフェアレディZが飛び出て来た。
彼はぶつかる瞬間、バイクから手を離し、猫の様に体を丸めるのが、精一杯だった。
それでも10mは投げ出された。体はアスファルトに叩きつけられ、そのまま路面を滑走し、縁石にぶつかってやっと止まった。
彼は目をつぶったまま、動物が傷ついた体を回復するまで、丸まっている様にじっとしていた。
車にはねられた彼は、犬神 雲母(キララ)高校2年生17才である。
彼は犬神家の正統な血筋を引く、狼男である。
満月に近付けば近付く程、無敵の体となり、交通事故程度の怪我ならば、30分位で完治してしまう。
しかし今夜は新月。
普通の人間並の体力しかない。でも意志だけは、狼男そのものである。
事故後数分でフラフラと立ち上がった。
そして、全身激痛が走る中、足を引き摺りながらTBNにころがり込んだ。
キララはビデオテープを受付の警備員に手渡して、気絶した。
最初のコメントを投稿しよう!