2006年11月21日(火曜)新月

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2006年11月21日(火曜)新月

雨の夜、彼は愛車(ホンダホーネット250バイク)を飛ばしていた。 背中のバックには、火災現場のビデオテープが入っている。 ついさっき、現場のキャメラマンから受け取ったばかりだ。 急いで、東京港区のテレビ局TBNに届けなければならない。 後一つカーブを曲がれば、局に着くと思った瞬間、急に赤のフェアレディZが飛び出て来た。 彼はぶつかる瞬間、バイクから手を離し、猫の様に体を丸めるのが、精一杯だった。 それでも10mは投げ出された。体はアスファルトに叩きつけられ、そのまま路面を滑走し、縁石にぶつかってやっと止まった。 彼は目をつぶったまま、動物が傷ついた体を回復するまで、丸まっている様にじっとしていた。 車にはねられた彼は、犬神 雲母(キララ)高校2年生17才である。 彼は犬神家の正統な血筋を引く、狼男である。 満月に近付けば近付く程、無敵の体となり、交通事故程度の怪我ならば、30分位で完治してしまう。 しかし今夜は新月。 普通の人間並の体力しかない。でも意志だけは、狼男そのものである。 事故後数分でフラフラと立ち上がった。 そして、全身激痛が走る中、足を引き摺りながらTBNにころがり込んだ。 キララはビデオテープを受付の警備員に手渡して、気絶した。
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