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僕は肖像画を持ち屋敷へ向った。
完成した肖像画を渡すためと、彼女と結婚することを許してもらうために。
「僕はマリーのことを愛しています。」
完成した肖像画を見ていた目が僕へと向けられる。
「マリーとの結婚を許してくれませんか?」
マリーの父親は自分の座っていた椅子に肖像画を置き、僕の目の前まできて話し始めた。
「娘はまだ子供なんだ、一時の感情で一生を棒に振る訳にはいかん。」
その話声には、微量の怒気が含まれている。
「僕は本気です。マリーをきっと幸せにしてみせます。」
「ダメだ、幼い頃に母ん亡くし、娘には他の誰よりも幸せになってもらいたい。絵描きなんぞと一緒になるなんて許さん。」
「けれど、・・・」
僕は言葉をつむごうとしたその時。
バシッ!
これが答えだと言わんばかりに僕の顔へ、拳が飛んできた。
「娘は良家に嫁がせる。いつか、私の言ったことが正しかったと分かる日がくるだろう。」
マリーの父親は椅子に置いてあった肖像画を差し出し、一言だけ言葉を放った。
「もう、娘とは会うな。」と・・・
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