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「…お友達はいるの?」
何を聞こうか迷っていたが、言葉がつい出てしまう。内心しまったと思うセイレーンであったが、正直なところ少しでも彼のことが知りたい。
「いない、“あそこ”には僕以外の人間はいないよ」
冷たく言い放つと、上着をはためかせながら消えてしまった。取り残された彼女は、何故かやるせない気持ちでいっぱいだった。
以前からセイレーンはフォルトゥのことを気にしていた。
しかし今までは、話しかける勇気が出ず、何か良い機会が巡ってこないか探していた。
そんな時に彼の独り言を耳にし、偶然現れたように見せかけた。計算してこの場所に訪れたが、まさか早くも機会が巡ってくるとは予想もしていなかった。
「せっかくのチャンスだったのに逃しちゃった」
今はない面影を見つめる。それはどこか、切なくて吐息が漏れるような表情だった。
「セイ、ここにいたのね」
突然現れた黒衣を纏った女性は、セイレーンに話しかけた。後ろを振り返ってみれば、この人は施設で子供たちの面倒をみているシスターだった。
「シスター、どうしたの?」
「みんなとお出掛けのじかんなのに、あなたの姿が見えなかったから探しに来たのよ。早くいらっしゃい」
「はぁ~い」
返事を返すと、シスターの後を追うようにその場から離れた。しかし、きになっているのは、フォルトゥの言動だ。
なぜ彼は、思うや分からないという曖昧な発言が多いのか。普通なら施設に来た年や、いつから花が咲いている事くらい覚えているはずだ。
セイレーンはせのことが引っ掛かっていて、お出掛けなどどうでもよかった。
「ねぇ、シスター・カリス。フォルトゥっていう少年のこと知らない?」
施設に長く居るシスターなら知っていると思ったセイレーンは、迷うことなく質問をぶつけてみた。すると、カリスと呼ばれた女性はぴくりと肩を動かし、振り返りもせずに答えた。
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