プロローグ

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「世界でも一位二位を争う大都市」 「貿易によって様々な文化が溢れ、栄えている」 「様々な地方からやってきた美人が沢山いる」 暗い夜道を歩く男がこの街にやってきた三つ目の理由だ。特に三つ目の理由でこの街にやってきたのだが。 「美人…ねぇ…」 黒のコートに身を包んだ男が呆れたようにつぶやいた。 男の足元には体を千切られた女性と思われる遺体が転がっていた。男の足元だけでなく、荒れ果てた街道に沢山の遺体が転がっている。 栄えている街に限ってスラムは酷いものだ。遺体の異臭以外にも、食べ物が腐った臭いや、排泄物の臭いが鼻をつく。 男はため息をつきながら、スラムから脱出するべく歩き出した。 (こんな大都市でも魔物が暴れてるのか…。こりゃ思った以上に大事だな…) 男は面倒くさそうに、そしてどこか楽しそうな笑みを浮かべた。 男は黒いコートを翻し、腰から二本の剣を引き抜いた。二本の剣は月明かりに反射し、より鋭く輝いた。 「やれやれ…変な奴等にばっかりモテるのはごめんなんだがな…」 20人のかつて「人間」だったものが、男を取り囲んだ。ボロボロの服に、腐った体、中には内臓や目玉の飛び出ている者までいる。 20人ものゾンビに囲まれ、男は顔をしかめた。 その男にとっては烏合の衆だ。だが、男はあることに気がついた。 (やけに腐ってない奴もいるな…。普通ゾンビって肉が溶けるほどもっと腐ってないか?) 見る限りでは、まだ肌色の皮膚のゾンビもいる。普通なら腐りはてて紫色に変色しているはずだ。 男はその原因をいろいろ考えようとしたが、すぐに止めた。 いや、正確には止めざるを得なかった。ゾンビが襲いかかってきたのだ。 男は身を屈めて地面を蹴った。その一蹴りで一人のゾンビの前まで距離を詰めると左手に持った剣でゾンビの首をはねた。男は勢いそのままに首をはねたゾンビの脇をすり抜けると、アイススケートのターンのようにくるりと身を翻した。 あまりの早さにゾンビは男の姿を見失い、探そうとしたが、見つける前に男が首をはねる方が早かった。 それから、男がゾンビを全滅させるまで時間はかからなかった。 戦いを終えた男はため息をつきながら双剣を鞘に納めた。 「くそっ…美女なら大歓迎なのに…」 男が毒ついてその場から立ち去ろうとしたとき、どこからか女性の悲鳴があがった。 場所はそう遠くはなかった。
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