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    「ほんのちょっとした、頼まれ事なんです。」       僕は缶ビールを袋から出してテーブルに置いた。   「奥さんに、ビールを飲んで頂きたいのです。」   「……はい??」   あまり唐突な言葉に、奥さんは明らかに動揺した。   「…やっぱり変な宗教か何かですか?家はそういうのお断りしているので…」   「あぁっ違います!!ただ本当にそれだけなんです! 奥さん、息子さんが亡くなってから、一人で頑張って、お酒飲む暇もなかったんじゃないですか?」   「!」   「中身が怪しいとお思いならこの人が毒味しますから。」   「おいおいいいのか。全部飲むぞ俺は。」   「ちょ…何でそんな手加減無しなんですか。ダメですよ。ちょっとだけです!」   「喉が渇いたのー!!俺は砂漠のオアシスを求める孤高の旅人なのー!!」   「ここにある紅茶はなんだァ旅人ォォォ!!!」       「……本当にビールを飲めばいいだけなんですか?」   「あ、はい。出来れば…」   縁側に逸平さんが座っているのが見えた。       「…縁側で座って、飲んであげて下さい。」 
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