序章

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――とても繊細で美しい細工の施された扉に目をひかれた。 白、というよりも銀に近い色。 少し光って見えるのは周りが暗い色の建物ばかりだからだろうか。 引き寄せられるように扉を開ける。 開いて中を見ると、さらに輝きが増す。 中に入る。 人の姿をしたとても綺麗なものがいる クランはそう思った。 顔は見えないが髪の色が人とは思えないほど綺麗な銀色だ。 綺麗なものがクランを見た。 顔を見ると、人間離れした顔立ちにため息がもれる。 「お前はそこらへんに転がっている者達と同じ者か」 ―男の声だ。 「あの、オレ、すみません、勝手に入って来て…」 この町は国の端で治安が悪く、家をなくしている者が多かった。 そういう人達はだいたい誰もいない家の中に入り、金目の物を盗む。 そして盗んだ物を売って生活している。 勝手に入って来たんだからそう思われて当然だよな。 「ただ、凄く綺麗な扉だったから…」 男は眉一つ動かさずクランを見つめている。
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