―感情

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いつからか深雪は、 笑わなくなった だからと言って泣く訳でも無かった。 只毎日 心配そうな顔をして 恐る恐る俺に話し掛けて来る。 それが余計に苛立った。 怒ればいいのに 俺の態度に… 部屋に一人鍵を掛けた。 呼ぶ声も聞こえないふりをした。 「っ……章二(ショウジ)…っ…」 そのうち俺の名前を呼んで、 深雪が啜り泣く声が聞こえたけど 俺は何もしなかった。 ベッドに突っ伏したまま 気付けば眠っていた。 目覚めた俺が 部屋を出ると そこにはいつもいるはずの深雪が居なかった。 視界に映るのは テーブルに並べられた朝食と やたらと綺麗になったキッチン 物足りない、リビング。 出て行ったんだ… 理解するまでさほど時間は掛からなかった。 一緒に住んでいたとは言え 移動出来ない荷物の為に 深雪は自分の住むアパートを引き払ってはいなかった。 深雪には帰る場所がある。 知っていたし 何故だかまた戻って来るような気がしていた。 だから、 忙しい事に託けて自分から連絡もしなかった。
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