―感情

6/7
前へ
/208ページ
次へ
勿論 言えない。 俺は君を 何処へも連れて行ってやらなかったし 誰にも紹介しなかった 「俺の彼女」 孝太が言った時の 君の嬉しそうな顔が 脳裏に焼き付いて離れない。 美味いと二人が食べていた食事の味なんて 解らなかった。 バツの悪そうに俺から視線を外した君の 見慣れてたはずの横顔が 俺と居た時よりもずっと綺麗で 幸せなんだなって そう、思った。 忘れられなかった君を ようやく忘れ掛けた頃 また君は現れて もう手の届かない そんな存在になって 今度は、忘れさせてくれない 写真立ての中の二人が 今でも此処で笑ってる どうして俺は 君を 笑わせてあげられなかったんだろう。 簡単な事だったはずなのに こんな風に 君が笑った顔が 好きだったはずなのに フラッシュバックする記憶 君の幸せそうな笑顔 隣に居るのは 俺じゃなく、孝太。 最後まで泣き顔すら見せなかったから その笑顔しか 思い出せない。
/208ページ

最初のコメントを投稿しよう!

932人が本棚に入れています
本棚に追加