窓際。

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夏の陽射しが差し込む教室に ひときわ、 元の後ろ姿だけが光って見えて アタシの一目惚れから始まった恋は 片思いのまま、 今もまだ 続いている。 「ハジメっ、元っ」 夏の昼下がり つまらない英語の授業中。 ぼんやりとノートに書いた切れ端を元に渡す。 「ん?…ぶはっ」 振り返った元は紙切れを受け取って吹き出す。 しんと静まり返っていた教室に、元の声が響いて 一斉に注目を集める。 「芹澤~何してんだぁ」 先生が近付いて来て 元は余計に声を上げて笑った。 「何だ?その紙は」 アタシが渡した切れ端は 走り書きした先生の似顔絵。 「だって…コレ似過ぎだしっ」 笑いを堪え切れずに肩を震わせた元の手から 先生は紙切れを奪い取ると それを見るなり顔を真っ赤にした。 気にしているであろう先生のその薄い髪をリアルに書いていたからだ。 「誰だ、コレ書いた奴は」 「渡瀬さんでーす」 元が即答する。 ちょっと…。 庇うとかないのか。 「あ、はい。アタシです」 仕方なく手を挙げる。
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