932人が本棚に入れています
本棚に追加
/208ページ
「それにちょっとは庇ってくれたっていーじゃない」
「ダーメ。未来のせいだし?」
元はイタズラっ子みたいな顔をして笑う。
「とにかくこれ、終わらせちゃおうよ。帰れないし…」
ギッシリと問題が書き詰められたプリントにようやく目を落とす。
「はぁ…」
思わず溜め息。
相当な時間が掛かりそうだ。
「ね、未来。席代わって♪」
振り返ったまま座っていた元が突然そんな事を言い出した。
「えぇ?」
「今だけ、1番後ろ座ってみたい」
両手を合わせる元に
アタシが断れる訳もなく
席を立ち上がる。
「しょうがないなぁ~」
途端に笑顔になる元。
「やった!ありがと」
しばらくプリントに目を通す。
本当に終わらないと帰れないだろうし…
仕方なく問題を解き始めて気が付くと
後ろからペンを走らせる音が聞こえなくなった。
「…元?」
振り返ると、シャープペンを片手に持ったまま元はうとうとと眠っている。
太陽は落ちて柔らかくなった陽射しと
窓の隙間からは涼しい風が吹き込んで来ていて
眠るには最高の状況だった。
最初のコメントを投稿しよう!