其ノ一 ~山彦~

9/23
前へ
/44ページ
次へ
    いくらか山を登った時、切株を見付けた。数本の木はすでに切ったらしい。 さらに、周りの木を壱は見上げる。   『傷んでいる…?いや、傷付いてるって感じか…?』   そんな事を思い、さらに奥へと行くため歩き出す。   「まだ奥に行くの?」   壱と同じように、木を見上げていたはるが壱が歩き出したのに気付き、小走りして壱の後を追いながら聞いた。   「うん。山神様に会わなきゃね。」   壱は笑顔で言った。   二人は黙々と歩き続けた。     先程よりも大分山奥に来た頃、壱が立ち止まる。少し開けている所だ。 はるが何事かと首を傾げる。 すると、   「おーい、山神様ー、出て来て下さーい。」   壱が突然大声で叫び出す。 はるは驚きその場に立ち尽くす。 辺りは静まり返っている。   ざわざわと木々がざわめく。   「う~ん、だめか。」   そう言い、手を顎にあて少し考え込む壱。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加