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張角はこの動きに懐疑的ではあったが、同じ民草として苦労を分かち合っている者達の寄木になれるならと、この話を受け入れた。
大平道は、瞬く間に全土に拡がっていき、信者数万とも言われる巨大組織になっていった。
その頃から、弟達がしきりに国家打倒の話を持ち掛けてきだした。張角は、国家あっての民だと、考えていたので、この話には難色を示した。
「蒼天已に死すべし
黄天当に立つべし
年は甲子に在りて
天下大吉ならん」
この言葉と共に、黄色の巾を着けた信者が、黄巾党と名乗り、各地で蜂起していった。民衆の溜りに溜った不満を爆発させるかの如く、黄巾党は各地で快進撃を見せた。
叛旗を翻すことを拒んだ張角が、この様な動きがあったのを知ったのは、黄巾党が賊徒さながらに化していった後である。
とある日の午前、信者達に祈トウをしていたところ、一人の男が張角と刺し違えようと、刀身の短い刀を腹に据え、突っ込んできた。男はすんでのところで取り押さえられ、刃は張角には到らなかった。
男は従者達に組み伏せられながら、こう宣った。
「お前の手の者に殺された家族の積年の怨み、晴らさでおくべきか」
張角は、この男の放った言葉が気になり、間諜を生業にする者を銭で雇い、かの者の素性を探らせた。
暫くして、その間諜の知らせた内容は張角に驚嘆を与えるものであった。
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