椿

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誰かの願いがかなうころ あの子が泣いてるよ 誰かがこんな歌を歌っていた気がする。 世界が平等に幸せになることなんてない。 俺たちが一回笑うたびに、誰か一人命を落としているなら、狂っているのは世界じゃない。 俺たちだ。 でもそんなことは今はどうでもいい。 なんで俺の前にばあちゃんが寝ているんだろう。 息をしてるかもしれないのに、なんで白い布が顔にかぶせられているんだろう。 遊びにいこうとした矢先、携帯に親からの電話が入る。 「おばあちゃんが亡くなったのよ。」 サナエの待っても聞かずに俺はばあちゃんの家に走る、いや、奔った。 親は昔から俺に興味が無かった。あったのは俺の「能力」だ。 そんな親に俺も興味なんてわかない。 ばあちゃんだけが俺を愛してくれた。 仕事をいいわけに家に帰ってこない親なんかより、熱が出たの一言で家まですっとんでくるばあちゃんこそが、俺の「親」だった。 死んだ? 庭先に花を落とした椿がそのままになっている。 庭の手入れを欠かしたことのないばあちゃんの庭が、真っ赤に染まっている。 誰かがばあちゃんの真っ赤な血を持っていこうとしてるんだ。 坊さんの念仏なんかそっちのけで椿を集める。 待って。まだ逝くな!俺の帰る場所は天国なんかじゃない。ここなんだ………! いっぱいに集めた椿も、今はばあちゃんと一緒に焼かれてる。 壺に入らないから、俺はばあちゃんの大腿骨を折った。 ごめん………ごめんばあちゃん。 こんなのばあちゃんじゃない。ただの骨なのに。 親戚が宴会を開いていても、俺はずっと骨壺を見ていた。 サナエが隣にいてくれた。 ばあちゃんが死んだ。
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