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眩しいくらい清潔な印象の男の子。
「はじめまして、新井光紀です」
「……ハジメマシテ」
放課後、康利から指定された校門前。一人待つあたしに、新井君は、ぺこりと会釈した。
「いきなりゴメンね、形梨さん……僕の方から呼び出したのに、待たせちゃったみたいで。部活……サッカー部、中々抜けられなくて」
「や、その……アライ、さん?」
なんで康利は一緒じゃないの?
行き交う生徒たちの中、康利の姿を求めて目が泳ぐ。三人でって聞いたような気がするんだけど……。
「うん、ちょっとね、康利には外して貰った。彼の前だと、言いにくい事だから」
ガクの人工的に着色しまくった茶髪とは違う、天然で色素が薄い柔らかそうな髪に夕日が反射する。
「なに、かなぁ」
「うん。形梨さんの事が好きです。それだけ、言いたかった」
は……?
あたしの耳はいつから壊れてるんだっけ?
「ゴメンね、もちろん彼氏……康利いるの知ってるし、付き合って欲しいとかそういうんじゃないから」
「あ、うん」
にこおっ。
新井君は、無邪気な犬みたいに笑って、自分の髪をくしゃくしゃにした。
可愛い、ひとだね。
「だよね。いきなりこんな事言われても困るよね。うん。じゃあ、練習戻るね」
「頑張って」
手を振って新井君がグラウンドに走っていく。
ピリピリピリ……
「わあっ!」
【着信:松沢康利】
「やっぽー」
「……悪趣味…」
校門の、銅像に隠れていた……らしい……康利が、にやにや笑いながらPHSをポケットにしまった。
「あんたの友達に、告白されたんですけど」
「勇者だよなぁ」
うんうん、じゃねぇっつーの。
「なんかいい人みたいだけど断ったから」
「断ってねぇじゃん」
あれ? そうだっけ?
「なんか面白そう。付き合ってやれよ、俺公認で」
「は……もう別れ話?」
「ちげぇよ、公認で浮気……面白くない?」
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