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高校卒業の日、校門を出たところで約束をした。
「五年後、またここで会おう」
と。
懐かしい母校は私が卒業した時と少しも変わっていなかった。
変わったのは賑やかな声がもう聞けないくらい。
桜舞う華やかな季節なのにも関わらずここは静かだ。
私の学年が卒業してしばらく経つとここは廃校になってしまった。
この町は田舎で過疎化も進んでおり、もともと生徒数も少なかったのだが、最近は外に出させる親が多くなってしまったため更に少なくなり、ここはいらなくなったのだそうだ。
錆びた鍵のかかった校門を越えて久しぶりに登校した。静かな校庭を歩く。
校庭の隅には一本の桜の木があり、彼とはそこで落ち合うことになっていた。
しかし今は、あの立派な桜の巨木は切り倒され、切り株だけが取り残されたようにそこに置かれていた。
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