あの日あの時あの場所で

2/12
前へ
/12ページ
次へ
 高校卒業の日、校門を出たところで約束をした。               「五年後、またここで会おう」 と。  懐かしい母校は私が卒業した時と少しも変わっていなかった。 変わったのは賑やかな声がもう聞けないくらい。 桜舞う華やかな季節なのにも関わらずここは静かだ。 私の学年が卒業してしばらく経つとここは廃校になってしまった。 この町は田舎で過疎化も進んでおり、もともと生徒数も少なかったのだが、最近は外に出させる親が多くなってしまったため更に少なくなり、ここはいらなくなったのだそうだ。 錆びた鍵のかかった校門を越えて久しぶりに登校した。静かな校庭を歩く。 校庭の隅には一本の桜の木があり、彼とはそこで落ち合うことになっていた。 しかし今は、あの立派な桜の巨木は切り倒され、切り株だけが取り残されたようにそこに置かれていた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加