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ふと気が付くと約束していた時間はとうに過ぎてしまっていた。
彼はまだ来ていないのだろうか、それとも私をおいて先にいってしまったのだろうか。
校舎を見上げると一つだけ窓の開いている教室があった。私たちが日々を過ごした場所だった。
大きく開け放たれた窓からゆらゆら広がるカーテンの影に、ふと彼を見つけた気がして、私は歩き出した。
薄汚れて埃の積もった薄暗い廊下を歩くと美しい思い出が蘇ってくる。
まるで学生の頃に戻ったようだ。
休み時間に歩いた廊下は光で溢れていた。
走り回ってはしゃぐ生徒たちの活気に満ちて。
教室の入り口で足を止め、クラスの標識に積もっていた埃をぬぐった。
間違いなくここだ。
私たちが日々を過ごしたのは、さっきカーテンが揺れていたのは、ずっと捜し求めた彼がいるのは。
私はゆっくりとドアを開けた。
私は彼を捜し始めた。
教室の隅から隅まで。
暗く落ちる影の中を覗き込み埃まみれになりながら。
結局彼は見つからず、私が教室を出ようとしたその時、ありえない笑い声が聞こえた。
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