11/12
前へ
/105ページ
次へ
「あ…」 どうやら、落としてきてしまったらしい。 変わりの品は無い。 町に出れば、新しい物を買うことができる。 だが、もともと金銭はそれ程持っていない為、無駄遣いはしたくない。 …取りに戻るか否か。 迷い、悩む。 おそらく、落とした位置は あの場所 …。 瞬間、よぎるのは魔物の姿。 凶暴で狂暴な、命を狩るモノ。 …こんな形で自分の『人間らしさ』に気付くとは思わなかった。 人間らしい『非力』と『醜さ』。 圧倒的な力の差。 感じたのは、恐怖だけではなく、 生に対する執着。 いざという時になると後込みする。 なんて、浅はかな…。 心の内で自嘲気味に呟いて、私は顔を上げた。
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加