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見渡す限りのグラウンド。どこまでいっても同じ景色、同じ土、同じ空。
俺が、誰かって? そりゃあ、簡単さ。風見高等学校、1年生、速水康太。野球部所属。
俺が、どこにいるかって? そりゃあ、簡単さ。中学最後の大会の球場だ。土のにおいが臭い場所だ。
俺が、何故ここにいるかって? そりゃあ、簡単さ。今、大事な試合が終わったんだ。大切な、一番重要な試合が。
今までの事? そりゃあ、中学になってから、色々あったさ、色々とね……
え? 小学生の事? そりゃあ、簡単さ。
知らない。
全然知らない。いままでのことなんか。
気が付いたら野球やってて、気が付いたら中学生になってて、3年生になってて、気が付いたら……―――
……いいや、関係ないし、忘れちまった。
いままで適当に生きてきた。友達なんて呼べる奴なんてほとんどいない。やる気が、おきねえんだ。
取りえなんてもんは、足が速いって言われるのと、喧嘩が強いってことぐらいだった。
……どっちも、あんま意味ないし。
これからも、適当に生きていくつもりだった。
ずっとずっと、永遠に。誰に、何を言われても、適当に生きていくつもりだった。
……あのことが、俺の人生を変える、大きな事がおきるまでは。
見渡す限りのグラウンド。どこまでいっても同じ景色、同じ土、同じ空。
そこで俺は、中学生の事を語り始めた―――
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