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「なんのようだよ」
本当は俺が話をしたがっていたのに、シラをきる。しかし、相手にはお見通しらしかった。
「そっちこそなんのようだよ」
図星、返答に迷う。流石キャッチャーだな。
またもや吹いた強風によって、今度は帽子が飛ばされる。
「ええっと……」
いざとなると、何を話していいのか分からない。色々と困っていると、相手から話しかけて来た。
「お前、足速いじゃん」
「え?」
まさかそんな事を言われるとは思わなかった。しかも、盗塁を失敗した男に対してだ。
表情を悟られないために、相手の膝を見る。しかし、全然意味が無かった。
「いや、でも、お前のほうが肩強いし、実際にアウトにされたし……」
こういうとき、俺は自分のことを口下手だな、と思ってしまう。
何を言いたいのか、ハッキリしろ。
さっきまで吹いていた強風が止む。髪の毛がボサボサになり、それを治すため少し頭を振る。
「でもな」
接続語。この言葉からはさっきの逆の意味が来る。そうは分かっていたが、次に真鯛が言った言葉は、意味が分からなかった。
「盗塁は、足の速さじゃねぇんだ」
「……は?」
そういって、真鯛は立ち去った。
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