現実と虚構の間

2/34
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
中3の冬ともなるとどこの中学校も受験シーズンである。 僕の通っている中学校でも毎日必死になって休み時間や朝早く来て勉強をしている生徒を見かける。 僕もその一人で、日々勉強やらテストやらに追われていた。僕もそれほど勉強は得意ではないけれど、クラスの中では上位の方にいた。クラスの皆が 「お前、頭いいなぁ」 と、言ってくるときは正直言って照れくさい。 テストの点が良いからって僕はみんなにはやし立てられるのが好きじゃなかった。 そんなこんなで受験シーズン最終段階の冬に突入した。 みんなの口からは自然と高校の話題がでて僕はその話についていくことができなかった。 なぜなら、僕は初めから高校になど行く気がなかったからだ。 そりゃあ今の時代、いい高校に行き、いい大学に行きエリートの道に進むというのが自分のためでもあり親のためでもある。 でも僕は人生の半分をそんなくだらないことに使いたくはない。 生きたいように生き、死にたいように死ぬそれが僕の心の思いだった。 だが流石の僕も高校の前期選抜試験に合格した時はホッと一安心した。 親は泣きながら喜んでくれたし、なんと言っても県内ナンバーワンの進学校に合格できたのだから泣いて喜んでくれてもおかしくとも何ともない。受験に合格した日の夜から僕はこっそり、家での身支度を始めた。家出をする日は三日後と決めていた。 なぜなら、その日から僕以外の家族は全員温泉旅行に行くことになっていたからだ。 僕がどこに行こうと勝手だった。 それからの三日間はお金やら食料やらを鞄の中に詰め込み三日後を待った。 それからの三日間はいろいろなことがたくさんあった。 学校でお楽しみ会があったり、文集を作ったりと実にハードな三日間だった。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!